テレビで選挙特番を見ていると、投票が締め切られた瞬間に「当選確実」のテロップが出ることがあります。
「まだ開票もしていないのに、なぜ結果が分かるの?」と思ったことはないでしょうか。
その裏側で活躍しているのが統計学です。この記事では、選挙の出口調査にどのように統計学が使われているのかを、初心者にも分かりやすく解説します。
出口調査とは何か

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出口調査(exit poll)とは、
投票を終えて投票所から出てきた有権者に対して、
- 誰に投票したか
- 年齢・性別
- 支持政党
- 政策への考え
などを聞き取る調査のことです。
日本では主にテレビ局や新聞社が共同で実施し、その結果をもとに当落予測を行います。
なぜ「全員」に聞かなくても結果が分かるのか
選挙の投票者は数百万人、時には数千万人にもなります。
その全員に聞くことは現実的ではありません。
ここで登場するのが統計学の考え方です。
標本調査の考え方
統計学では、
- 母集団:全ての有権者
- 標本:その一部を抽出した人々
と考えます。
もし標本が母集団をうまく代表していれば、
一部の人に聞くだけで全体の傾向を推定できるのです。
例えば、
- 有権者:1000万人
- 出口調査対象:3万人
であっても、適切にサンプリングすれば
高い精度で結果を予測できます。
出口調査で使われる統計学のポイント
① 無作為抽出(ランダムサンプリング)

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調査対象を選ぶときに重要なのが、
特定の人に偏らないことです。
例えば、
- 若者ばかりに聞く
- 都市部だけで調査する
といった偏りがあると、結果も歪んでしまいます。
そのため、
- 地域
- 投票所の規模
- 人口構成
などを考慮して、
代表性のある投票所を選びます。
② 標本サイズと誤差
出口調査の結果には、必ず誤差があります。
統計学では、この誤差を
**標本誤差(サンプリングエラー)**と呼びます。
一般に、
- 標本数が多いほど誤差は小さくなる
- 標本数が少ないほど誤差は大きくなる
という関係があります。
例えば、単純な割合の推定では
誤差の大きさはおおよそ次の式で表せます。誤差≈標本数1
つまり、
- 標本数100 → 誤差 約10%
- 標本数10,000 → 誤差 約1%
と、標本数が増えるほど精度が上がります。
③ 重み付け(ウェイト調整)
実際の調査では、
- 若者の回答が多すぎた
- 高齢者の回答が少なかった
といった偏りが生じることがあります。
その場合、統計学では
重み付け(ウェイト調整)を行います。
例えば、
- 実際の有権者構成
若者30%、高齢者70% - 調査結果
若者50%、高齢者50%
このとき、
- 若者の回答を少し軽く
- 高齢者の回答を少し重く
扱うことで、
実際の人口構成に近づけます。
④ 開票データとの統合モデル
現代の出口調査は、
単純な集計だけではありません。
実際には、
- 出口調査の結果
- 過去の選挙データ
- 開票速報
などを組み合わせて、
統計モデルで当落を推定しています。
これは、
- 回帰分析
- ベイズ推定
- 時系列モデル
などの統計手法が使われています。
そのため、投票締切直後でも
高い確率で当選者を予測できるのです。
なぜ「当確」がすぐ出るのか
テレビ局は、出口調査の結果をもとに
- 勝敗がほぼ確実
- 誤差を考えても逆転の可能性が低い
と判断した場合、
**「当選確実(当確)」**を出します。
これは「100%当選」ではなく、
統計的にほぼ確実という意味です。
出口調査の限界
統計学を使っていても、
出口調査には限界があります。
主な要因は次の通りです。
主な誤差要因
- 回答を拒否する人がいる
- 嘘の回答をする人がいる
- 地域による投票傾向の違い
- 天候や時間帯の影響
そのため、まれに
- 当確が取り消される
- 予測と結果が異なる
といったケースも起こります。
まとめ
選挙の出口調査は、単なるアンケートではなく、
統計学の理論と実務が組み合わさった高度な予測システムです。
ポイントを整理すると、
- 全員に聞かなくても、標本調査で全体を推定できる
- 標本数が多いほど誤差は小さくなる
- 重み付けで偏りを補正する
- 統計モデルで当落を予測する
という仕組みで成り立っています。
テレビで「当確」が出たときは、
その裏で統計学が活躍していることを思い出してみてください。




